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父と息子の二人旅・男旅「思い切り泣いたり笑ったりしようぜ」

年に一度は息子と二人旅に出かけることにしています。称して「男旅」。息子が3歳の時に始まったこのイベント、息子にとっても私にとっても大変重要なものになっています。

旅先で笑い転げたり、感動したり、時にはホロリとさせられたり。旅は生きていることを実感させてくれます。



「くるり」というバンドに『ばらの花』という曲があります。若いカップルの切ない感情を描いた名作なんですが、こんな一節があります。



安心な僕らは旅に出ようぜ
思い切り泣いたり笑ったりしようぜ

作詞・作曲 岸田繁 『ばらの花』より引用


この一節は、私にとって息子との旅そのものです。

小さな子供と暮らしていれば、日々の生活が笑いに満ちたものになるということはご理解いただけるかと思います(そりゃ、面倒なこともありますけれど)。ましてや非日常的な旅の空では、思わぬ笑いや喜びに出会うこともしばしば。

そして時には、思わず涙ぐまされることもあります。



息子が4歳の時の話。その年の目的地は「金沢」でした。電車マニアだった息子の希望を容れて、今はなき「雷鳥号」に乗って行く金沢の旅です。

金沢駅に降り立った私たち二人は、駅そばのホテルにチェックインし、すぐに「近江町市場」に向かいました。ご存知の方も多いとは思いますが、「近江町市場」とは、金沢の胃袋とでも言うべき市場で、観光客にも人気のスポットです。

魚が大好きな私たちは、近江町市場で寿司を食べるべく、喜び勇んで市場に向かいました。ただ、旅行の直前まで仕事詰めだった私は、少し風邪気味。旅行のあいだゆっくり遊ぼうとすると、どうしても直前は無理なペースで仕事をこなしておく必要があり、寝不足から体調を崩しがちになるんですよね。

近江町市場に行ってあれこれと見て回っていると、美味しそうな寿司店がありました。お昼時にはまだ時間があるのに、行列ができています。普段は並んでまで物を食べようと考えないんですが、旅先、しかも息子にぜひぜひ食べたいと懇願されたとあっては並ばざるを得ません。

整理券をいただいて、店先のベンチに座ってみると、目前に果物店がありました。店頭には美味しそうなアイスパインが並んでいます。

「パパ、あれ食べたいな。」
「あまり食べると、楽しみにしてるお寿司を食べられなくなるぞ。後にしろよ。」
「えーっ、でも食べたいなぁ。」
「じゃあ一本だけな。」

お店のお姉さんに代金を支払って、アイスパインを息子に渡します。

息子が一口食べたと思ったその時、手が滑ったのか、アイスパインが地面に落ちてしまいました。

「あ〜っ!」
「パパ、もう一本買ってぇ。」

こんな時、私は情け容赦なく叱り飛ばします。

「アホか!お前が不注意やからこんなことになるんじゃ!買ってもらった物を無駄にすんな!絶対に買わん!」

怒気を含んだ私の大きな声で、息子は半泣きになり(いや泣いていたでしょうか)、俯いてしょんぼりしていたことを覚えています。

(塾生には声を荒らげるなんてことは一切しないんですが、息子は別。親として「しつけ」の任があるからです。時に情け容赦なく大声で叱り飛ばすのが父たる私の役目。)

と、その時。

二人の目の前にアイスパインがニョキッと一本。

驚いて顔を上げると、先ほどの果物店のお姉さんがアイスパインを差し出しています。

「これ、食べてよ。」
「いえいえ、お気持ちは有り難いんですが、こいつのミスですから、結構です。お気持ちだけ頂いておきます。」
「いや、いいから食べて。ほら、ボク、どうぞ。」

そこまで言ってくださる以上、断るわけにもいかなくなりました。

「すみません。それでは有り難くいただきますが、代金を支払わせてください。」
「いいよいいよ、そんなの。はい、どうぞ、ボク。」

息子にもお礼を言わせて、有り難くアイスパインを頂戴しました。ニコニコしながらパインにかぶりつく息子。現金なヤツ。

おそらく、果物店のお姉さんにも、お子さんがいらっしゃるんでしょう。パインが食べられない上に、大声で怒鳴りつけられている子供を見て、憐れんで下さったんだろうと思います。金沢、なんか温かい町なんですよね。



並んで入った寿司店は、もう筆舌に尽くしがたいぐらい美味しく、二人してお寿司を堪能しました。金沢のお寿司、本当に美味しいです。「うまい!」「おいしい!」「マジうめぇ!」「わわわ、すげぇ!」関西弁でうるさい親子です。あんまりうまいうまいと連発するので、店員さんに笑われました(笑)。

近江町市場を去る前に、もう一度果物店に立ち寄ります。

「さっきはどうもありがとうございました。そうだな〜、このミカン下さいな。」
「いやいや、気を使わなくていいのよ。」
「いえいえ、お寿司の後で、ちょうど果物を食べたい気分なんですよ。」

ミカンの入った袋を抱えて二人でホテルに戻りました。この時点で、風邪気味の私はかなりダウン気味。ミカンを少し食べてビタミン補給して少し仮眠をとることにします。

「なぁ、パパちょっとしんどいから、1時間ほど寝るわ。それで大体治せると思うし。絵を描いたりして一人で遊んでられる?」
「うん。いいよ。」

こういう聞き分けはいいので助かります。一人でお絵描きしているのを横目に1時間ほどぐっすり眠りました。

目覚めてみると、枕元に茶托が置いてあります。よく見ると、茶托の上には、ていねいに皮を剥いたミカンとスナック菓子。

「???」
「あ、パパおきた。かぜのときはミカンたべたらいいよ。それとパパのすきなおかしもいいよ。はい。」

いつの間にこんなことが出来るようになったんだろう。ちゃんと人を思いやる心が育っているじゃないか……。胸が熱くなってきます。

「……ありがとうな、ありがとうな。うん、ほんとにありがとうな。これを見たら、風邪も治ってきたよ。」

ニコニコしている息子をぎゅっと抱きしめながら、浮かぶ涙をばれぬようそっと拭う。窓から見える金沢の空は、優しい色をしていました。



親バカ?そうでしょうね。でも、子を持つ親ならこの気持ちを分かっていただけるかと思います。子を持つことで分かることは決して少なくありません。

安心な僕らは旅に出ようぜ
思い切り泣いたり笑ったりしようぜ


「ばらの花」の歌詞にはこんな続きがあります。

だけどこんなに胸が痛むのは
何の花に喩えられましょう

作詞・作曲 岸田繁 『ばらの花』より引用


胸の痛みを、せつなさを、花に喩える。
その詩心も、息子との二人旅を思わせるのです。

そんな息子も、はや10歳。いつまで二人旅が楽しめるでしょうか。

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